AMD Versal™ アダプティブ SoC のシステム評価 (バリデーション) に関するプランニングを実施するには、ここまでの章で定義した方法で重要なインフラストラクチャをシステムに組み込む必要があります。これにより、全体的なデザインの機能、性能、消費電力などを体系的に評価し、システムが量産に必要な条件を満たしているかを確認できるようになります。この章では、各システム デザイン タイプにおいてシステム評価/検証を計画する際に重視すべき主な領域について説明します。評価/検証の詳細は、 『Versal アダプティブ SoC システム統合および検証設計手法ガイド』 (UG1388) のこのセクションを参照してください。
次に、システム レベル評価の一般的な手順を示します。
- 電源投入と電源電圧のチェック
- 基本的なブートとデバイス コンフィギュレーション
- デバイスの機能サブシステムの立ち上げ
- ソフトウェア スタックおよびランタイム ドライバーまたはアプリケーション プログラミング インターフェイス (API) の立ち上げ注記: システムによっては、この手順はオプションです。
- 性能評価
- 消費電力評価
電源投入と電源電圧の評価段階では、システム設計者は
『Versal アーキテクチャおよび製品データシート: 概要』 (DS950) を参照し、すべての電源電圧および各種ドメインの消費電流が正常なレベルであることを確認する必要があります。また、システムで実施した電源ドメインの統合に基づいて、ボード上の電圧ドメインに対するテストを計画する必要があります。各種ドメインの消費電流は、PDM ツールまたはデザインの見積もりに基づく report_power
を使用して求めることができます。
電源電圧および消費電流に問題がなければ、通常はデバイス コンフィギュレーションが次の段階となります。通常、デバイスの最初の立ち上げには Versal デバイスの JTAG ポートを使用します。デバイスの検出とアドレス指定は、標準の AMD Vivado™ ハードウェア マネージャーから実行できます。詳細は、 『Vivado Design Suite ユーザー ガイド: プログラムおよびデバッグ』 (UG908) を参照してください。また、Versal アダプティブ SoC には、オンチップの電源電圧と温度を監視できる高度なシステム モニターが内蔵されています。ハードウェア システム設計者は、 『Versal アダプティブ SoC システム モニター アーキテクチャ マニュアル』 (AM006) の要件に従ってシステム モニターの使用を有効にできます。
ハードウェアのみのシステムの場合、最初の立ち上げが完了したら、デザインに含まれる複雑な GT や I/O、および DDR メモリ コントローラー サブシステムなど、内蔵のハード IP サブシステムに進みます。詳細は、次の資料のハードウェア評価/検証に関するセクションを参照してください。
- シリコン上での NoC/DDR メモリの起動については、「Vivado Design Tutorials: Versal Network on Chip/Multiple DDR Memory Controllers」および 『Versal Adaptive SoC Programmable Network on Chip and Integrated Memory Controller LogiCORE IP 製品ガイド』 (PG313) のこのセクションを参照してください。
- AI エンジン サブシステムの最初のブリングアップについては、「Vitis Tutorials: AI Engine Beamforming」を参照してください。
- PS サブシステムについては、Versal アダプティブ SoC エンベデッド デザイン チュートリアルを参照してください。
基本的なテストによって Versal アダプティブ SoC の全体的なサブシステムの健全性を確認したら、システム設計者はシステムの実際の機能モデルを立ち上げることができます。通常、そのためには全体的なシステム デザインの機能に応じてシステム レベル テストを開発する必要があります。システムのタイプによっては、このテスト開発でソフトウェア スタックが必要になることもあります。
システム デザインの基本機能を確立したら、システム設計者は性能レベルのテスト ケースを実行して、重要な性能要件についてキャリブレーションと評価を実施できます。次に例を示します。
- 64 アンテナ システムの信号処理スループット。この例は、「Vitis Tutorials: AI Engine Beamforming」に示しています。
- LeNet たたみ込みニューラル ネットワーク (CNN) を使用した MNIST (Modified National Institute of Standards and Technology) データベースの画像認識における 1 秒あたりの画像処理数の例は、「Vitis Tutorial: AI Engine LeNet」に示しています。
- ハードウェアのみのシステムの場合の NoC/DDR パフォーマンスの例は、「Vivado Design Tutorials: Versal Network on Chip/DDR Memory Controller Performance Tuning」に示しています。
デザインが十分な性能で動作することが確認できたら、次にシステム設計者は Versal デバイスのスタティックおよびダイナミック消費電力を計測します。システム設計者が消費電力の計測を計画する際には、システムが実際の性能で動作中の消費電流をリアルタイムに計測できるように、電力管理 IC (PMIC) インターフェイスにアクセスできるようにボードが設計されていることを確認する必要があります。
次の表に、デザイン タイプごとにシステム評価/検証をまとめます。
デザイン タイプ | ブートおよびデバイス コンフィギュレーション | サブシステム機能の評価 | システム機能の評価 | システム性能の評価例 | システム消費電力の評価 |
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ハードウェアのみのシステム |
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次のツールを使用:
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ハードウェアのみ |
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エンベデッド システム |
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次のツールを使用:
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機能連携のために XRT または Linux が必要 |
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エンベデッド AI エンジン システム |
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次のツールを使用:
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機能連携のために aiecompiler、XRT、Linux、および AI エンジン ドライバーが必要 |
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