センス ラインの制限

Versal アダプティブ SoC PCB デザイン ユーザー ガイド (UG863)

Document ID
UG863
Release Date
2024-04-01
Revision
1.8 日本語

電圧の差異

センス ラインは POL (Point of Load) 側で 1 箇所にしか配置できないため、検出点より前のエリアはこれより高い電圧を示し、POL より後ではこれより低い電圧を示すことがあります。次の図に、この電圧差異を示します。電流は VRM から POL へ流れるため、V1 での電圧は V2 での検出点の電圧よりも高くなります。同じように、V3 での電圧は検出点 V2 の電圧よりも低くなります。

このような場合は、シミュレーションを実行して各 BGA ボールの電圧レベルを確認し、電圧が中間値のボールにセンス ラインを配置することを推奨します。センス ラインを配置した結果、関連する BGA ボールの電圧がデータシートの仕様値を超えないように注意してください。

図 1. BGA ピン フィールドのさまざまな位置での電圧

複数のレールを接続した場合のセンス ラインの管理

アダプティブ SoC の複数のレールを統合して必要な電圧レギュレータの数を減らすというのは、よく使用される設計手法です。一般に、センス ラインの位置を決める際は、電圧の差異 で説明したように、シミュレーションを実行して最も電圧の低い BGA ボールと最も電圧の高い BGA ボールの間に置くことを推奨します。

ただし、複数のレールを統合した場合、統合した 1 つ以上のレールで消費電流のレベルが過剰になり、同じプレーン上のほかのレールよりも電圧降下が大きくなった場合、関連するセンス ラインの適切な位置を決めるのが難しくなることがあります。センス ラインを最も負荷の大きい POL または中間 POL に配置することで、レギュレータの出力が上昇し、その結果、ほかのレールの負荷の小さい BGA ボールの電圧が上昇してタイミングに影響を与えて、回路の性能が予測できなくなる可能性があります。最悪の場合、負荷の小さい BGA ボールの電圧がデータシートの仕様値を超えることになります。

統合したレールのうち、1 つのレールの負荷が大きく、それによって負荷の小さいレールの電圧が高くなりすぎる場合は、負荷の大きいレールを専用のレギュレータに配置することを推奨します。それ以外のレールは統合したままでかまいません。このような状況は、主に VCCINT や VCC_SOC など電流量の大きいレールで発生します。

センス ピンが 1 本しかない VRM

一部の VRM には、グランド用のセンス ピンがありません。この構成の主な制約は、VRM が POL 側のグランド電圧の変動を検出しないため、電圧レギュレーションの精度が低下することです。