異なるスタックアップの調整

Versal アダプティブ SoC PCB デザイン ユーザー ガイド (UG863)

Document ID
UG863
Release Date
2023-09-14
Revision
1.7 日本語

この章で説明したトレースの幅、間隔、長さ、スキューの制約は、基準材料の仕様 に示す基準 PCB 材料に基づいています。これらのパラメーターを使用しない場合は、インピーダンス、長さ、スキューの仕様を満たすようトレースの幅、長さ、層の高さ、間隔、誘電材料を調整する必要があります。

PCB 製造施設でこれらを調整し、適切なインピーダンスおよび伝搬遅延を達成できます。このセクションでは、これらの各項目の影響を示します。また、2 次元フィールド ソルバー ユーティリティにより、さまざまな組み合わせをテストできます。

誘電材料

各誘電材料は独自の比誘電率 (DK) と誘電正接の特性 (DF) を備えています。これらは、ライン インピーダンス (Z0)、信号伝搬遅延 (TPD)、信号損失 (α) に影響を与えます。DK が大きくなると、インピーダンスは小さくなり、信号伝搬遅延と信号損失は大きくなります。DK が小さくなると、インピーダンスは大きくなり、信号伝搬遅延と信号損失は小さくなります。PCB の一般的な DK の範囲は 3.4 ~ 4.6 です。特定の誘電材料内の伝搬遅延は一定であり、層の高さ、導体の幅、導体の間隔などその他のボード パラメーターの影響を受けません。伝搬遅延は周波数の影響を受けますが、その影響は一般的なメモリ速度に対してごくわずかです。信号損失も周波数の影響を受け、周波数が上がると損失は大きくなります。

次に、伝搬遅延 (TPD) の計算式を示します。DK は誘電率、c は自由空間における光の速度 (2.998 x 108m/s または 1.180 x 1010in/s) です。

図 1. 伝搬遅延の計算式

次の表に、誘電率 (DK) がインピーダンス (Z0)、伝搬遅延 (TPD)、信号損失 (α) に与える影響を示しています。

表 1. DK とインピーダンス、伝搬遅延、信号損失の関係
DK Z0 TPD α ↑
DK Z0 TPD α ↓

トレース幅

トレース幅 (W) が大きくなると、インピーダンスは小さくなり、信号伝搬遅延は変わりません。トレース幅が小さくなると、インピーダンスは大きくなり、信号伝搬遅延は変わりません。トレース幅を調整する際は、間隔 (S) も調整して、クロストークに対するノイズ耐性を維持する必要があります。間隔係数は、メモリと信号のタイプに応じておよそ 1.0 倍~ 3 倍です。次の表は、トレース幅がインピーダンス、間隔、伝搬遅延に与える影響を示しています。

表 2. トレース幅とインピーダンス、必要な間隔、伝搬遅延の関係
W ↑ Z0 S ↑ TPD (変化なし)
W ↓ Z0 S ↓ TPD (変化なし)

層の高さ

層の高さ (H) が大きくなると、インピーダンスは大きくなり、信号伝搬遅延は変わりません。層の高さが小さくなると、インピーダンスは小さくなり、信号伝搬遅延は変わりません。層の高さを変える際は、層の高さが小さすぎると、(PCB の製造工程でプレーンの短絡を避ける必要があるため) 製造コストが上がることを考慮に入れる必要があります。層の高さが大きすぎると、アスペクト比違反が発生することがあります。次の表は、層の高さがインピーダンスおよび伝搬遅延に与える影響を示しています。

表 3. 層の高さとインピーダンスおよび伝搬遅延の関係
H ↑ Z0 TPD (変化なし)
H ↓ Z0 TPD (変化なし)

ベース銅重量

導線のベース銅重量 (Cu oz) が大きくなると、インピーダンスは小さくなり、信号伝搬遅延は変わりません。ベース銅重量が小さくなると、インピーダンスは大きくなり、信号伝搬遅延は変わりません。PCB に使用される一般的なベース銅重量は 0.5 (半オンス銅) です。ベース銅重量を変えた場合の影響はごくわずかですが、通常コストの上昇に対して得られる利益は小さいため、この変更はお勧めできません。

インピーダンスの目標値を満たすデザイン パラメーターの調整例

次の表に、メイン L1 PCB エリアのストリップライン インピーダンスの目標値が 45Ω の例を示します。仕様値は、トレース幅 (W) = 7.0mil、DK = 3.71、高さ = 6.7mil です。次の表には、インピーダンス値の目標を達成するために必要な誘電率、トレース幅 (W) および高さ (H) の調整を示しています。間隔 (S) は伝送ライン インピーダンスの要因ではありませんが、性能要件を継続して満たすには、表のように間隔を変える必要があります。次の表に示すように、DK が大きくなると信号損失も大きくなります。

表 4. インピーダンスの目標値を満たす PCB パラメーターの調整例
目標値 ([Z0] Ω) 材料 DK W (mil) S (mil) H (mil) 基準値からの変更
45 Megtron 6 3.71 7.0 6.7 基準値
45 Megtron 6 3.71 7.5 ↑ 7.15 ↑ DK は同じ、幅は増大、高さは増大
45 Megtron 6 3.4 ↓ 7.0 6.27 ↓ DK は減少、幅は同じ、高さは減少
45 Megtron 6 3.4 ↓ 7.5 ↑ 6.7 DK は減少、幅は増大、高さは同じ