タイミング アークのディスエーブル - 2023.2 日本語

Vivado Design Suite ユーザー ガイド: 制約の使用 (UG903)

Document ID
UG903
Release Date
2023-11-01
Version
2023.2 日本語

set_disable_timing コマンドを使用すると、セル内のタイミング アークをディスエーブルにできます。セルの入力ポートから出力ポートまでのタイミング アークのみをディスエーブルにできます。

注記: set_disable_timing コマンドは、ポートまたはワイヤからのタイミング アークをディスエーブルにするためにも使用できます。この場合、-from および -to コマンド ライン オプションは使用せず、ポート オブジェクトまたはタイミング アーク オブジェクトのみを指定します。

一部のタイミング アークは、特定の状況を処理するため、自動的にディスエーブルになります。たとえば、組み合わせフィードバック ループは推奨されず、正しくタイミング解析できません。このようなループは、ループ内のタイミング アークの 1 つをディスエーブルにすることにより分割されます。

別の例として、マルチプレクサーに設定されたケース解析があります。デフォルトでは、マルチプレクサーのすべてのデータ入力は出力ポートに伝搬されますが、信号にケース解析が設定されていると、1 つのデータ入力ポートのみが出力ポートに伝搬されます。この場合は、タイマーにより、それ以外のデータ入力ポートから出力ポートへのタイミング アークが分割されます。

set_disable_timing コマンドを使用すると、デザイン内のセルのタイミング アークを手動で分割できます。たとえば、組み合わせフィードバック ループを分割するためにディスエーブルにするタイミング アークをツールに判断させるのではなく、ユーザーが指定できます。

また、LUT 入力に複数のクロックが供給されているが、LUT 出力ポートには 1 つのクロックだけを伝搬する必要がある場合、伝搬しないクロックに関連するタイミング アークを分割することにより対処します。

LUTRAM が関係する状況もよくあります。LUTRAM 内には書き込みクロックと読み出しクロックの間に WCLK ピンから出力 O ピンへの物理的なパスがありますが、LUTRAM ベースの非同期 FIFO は、WCLK から O への CDC パスが発生しないように設計されています。それでも、このタイミング アークはイネーブルになっており、この WCLK から O へのタイミング アークを介するパスがレポートされ、このアークが原因で TIMING-10 DRC 違反が発生する可能性もあります。その場合、WCLK から O のアークをディスエーブルにし、これらのパスのタイミング解析が実行されて無効な DRC 違反が発生するのを回避する必要があります。このタイミング アークは、AMD LUTRAM ベースの FIFO の現在のインプリメンテーションでは自動的にディスエーブルになっています。

注記: タイミング アークをディスエーブルにすると、そのアークを介するタイミング パスはレポートされません。有効なタイミング アークをディスエーブルにしないように注意してください。ハードウェアでデザイン エラーとなるタイミング違反やタイミング問題を見逃す結果になる可能性があります。

set_disable_arc コマンドの構文は、次のとおりです。

set_disable_timing [-from <arg>] [-to <arg>] [-quiet] [-verbose] <objects>

-from および -to オプションには、Vivado オブジェクトではなく、ピン名のみを指定します。また、ピン名には、デザイン ピン名ではなく、ライブラリ セルからのピン名を使用する必要があります。次に例を示します。

set_disable_timing -from WCLK -to O [get_cells inst_fifo_gen/ gdm.dm/gpr1.dout_i_reg[*]]

上記のコマンドは、LUTRAM ベースの非同期 FIFO inst_fifo_gen/ gdm.dm/gpr1.dout_i_reg[*] すべてに対し、タイミング アーク WCLK->O をディスエーブルにします。

-from および -to の指定はオプションです。-from を指定しない場合、-to で指定したピンで終了するすべてのタイミング アークがディスエーブルになります。同様に、-to を指定しない場合、-from で指定したピンから開始するすべてのタイミング アークがディスエーブルになります。-from-to も指定されていない場合、コマンドで指定したセルのタイミング アークすべてがディスエーブルになります。

report_disable_timing コマンドを使用すると、ツールにより自動的にディスエーブルにされているタイミング アークとユーザーが手動でディスエーブルにしたタイミング アークがレポートされます。このリストが長い場合があるので注意してください。-file コマンド ライン オプションを使用すると、ファイルに結果が保存できます。

注記: -cells を使用して report_disable_timing を実行する階層モジュールを指定できます。