Dynamic Function eXchange (DFX) の抽象化シェル - 2023.2 日本語

Vivado Design Suite ユーザー ガイド: Dynamic Function eXchange (UG909)

Document ID
UG909
Release Date
2023-11-15
Version
2023.2 日本語

AMD デバイスでは、Dynamic Function eXchange (DFX) がサポートされます。DFX では、デバイスの一部の構成を動的に変更しながら、残りの部分では動作を継続させることができます。Vivado ツール フローでは、デザインをコンテキスト内でコンパイルできます。ソリューションには、配置配線を複数回実行する必要があります。

最初の実行で、スタティック デザイン インプリメンテーションと、各 RP の最初の RM を確立します。その後の配置配線は、初期スタティック イメージのコンテキストで実行されます。2 つ目以降の RM をインプリメントするには、完全に配置およびロックされたスタティック デザイン データベース (スタティック領域全体のネットリストと配置配線情報を含む) を Vivado に読み込んでおく必要があります。

抽象化シェル ソリューションでは、このコンテキスト内フローの要件が削減されます。スタティック デザインがロックされているので、新しい RM をインプリメントするときには変更できず、変更すべきではありません。コンテキストは重要であり、ツールを介するパスは変更されません。ただし、フル スタティック デザイン イメージを読み込む代わりに、抽象化シェル チェックポイントを使用できます。この抽象化シェルには、次の処理に必要な最小限の論理および物理データベースのみが含まれています。

  • 特定の RP 内に新しい RM をインプリメント
  • タイミングを検証し、PR 検証を実行
  • RM のパーシャル ビットストリームを生成

この方法を使用すると、次を実行できます。

  • 各 RM (2 つ目以降) のコンパイル時間およびメモリ使用率を削減
  • 各 RP のスタティック デザイン チェックポイントのファイル サイズを削減
  • 複数の RP を含むデザインで、すべて RM を並列インプリメント
  • フル スタティック デザインに読み込まずにパーシャル ビットストリームを生成
  • スタティック デザイン内の機密情報を隠す
  • スタティック デザイン内の IP のライセンス チェックを回避

抽象化シェル フローは、すべての UltraScale+ および Versal デバイスをサポートしています。プロジェクト モードと非プロジェクト モードの両方がサポートされますが、独自のデザイン情報の隠蔽や IP ライセンス チェックの回避といった利点は、非プロジェクト モードでのみ可能です。抽象化シェル フローでは、UltraScale または 7 シリーズ デバイスはサポートされません。

比較のため、次に 『Vivado Design Suite チュートリアル: Dynamic Function eXchange』 (UG947) の演習 9 の完全に配線されたデザイン チェックポイントを示します。このチュートリアル デザインは、Virtex UltraScale+ VU9P をターゲットとしており、シフトおよびカウント機能用に 2 つの RP を含みます。左下の Pblock は u_shift、その右上にある Pblock は u_count (図でハイライト) です。この図では、デバイスの上 2 つの SLR のみを示しています。

図 1. VU9P をターゲットにした通常のフル スタティック デザイン

これら 2 つの RP の抽象化シェルからは、DFX Controller IP を含むスタティック ロジックの大部分が取り除かれます。2 つの RP を含むこのデザインでは、抽象化シェル チェックポイントにターゲット RP Pblock のみが表示されます。

図 2. u_shift RP の抽象化シェル
図 3. u_count RP の抽象化シェル

このデザインでは、フル スタティックのみのデザイン チェックポイントのサイズは 58,816 KB です。u_shift と u_count の抽象化シェルのチェックポイント サイズは、それぞれ 1,712 KB と 1,873 KB です。サイズの削減量は、RP Pblock のサイズとスタティック デザインの複雑さによります。大型デバイスに小さな RP がある単純なデザインでは、サイズの削減量がかなり大きくなることがあります。スタティック ロジックが小さいデザインでは、サイズの削減量はそこまで大きくありません。