Versal ACAP の完全なパワー マネージメント グループの使用例

電源シーケンス制御の実装方法 (XAPP1375)

Document ID
XAPP1375
Release Date
2022-05-06
Revision
1.0 日本語

電源供給とシーケンス制御を簡略化するため、ザイリンクスはレールの統合を数多くサポートしており、これらは大きく 2 つのグループに分類されます。最小レール グループは、同じ電圧の電源レールをまとめたもので、これによってデバイスへの電源供給に必要なレギュレータの数を削減します。完全なパワー マネージメント グループは、電源ドメインごとにレールを分離したもので、これによってデバイスの一部のみ電源を切断し、より大きな省電力効果が得られます。

電源/消費電力ヒント: 電源シーケンス制御およびレールの統合 (グループ化) には、 Xilinx Power Estimator を使用してください。

ザイリンクス デバイスの各ドメインは並行して電源を投入できるため、レギュレータとイネーブル接続の数を削減できるほか、シーケンスに必要なステージ数も減らすことができます。次の図に、Versal AI コア デバイスで電源レール管理の柔軟性を最大限に高める場合の推奨レール グループを示します。このレール グループは、バッテリ駆動アプリケーションなど、消費電力の制約が厳しく、全体的な消費電力をなるべく削減する必要のあるアプリケーションに推奨されます。クロック ゲーティングでも消費電力は削減できますが、その場合、過渡ステップの影響に注意が必要です。この図で、各レールの横に記した番号は、デバイスの電源投入および電源切断シーケンスの順番を示しています。

図 1. Versal AI コア/プライムの完全なパワー マネージメント レール グループ

電源はドメインごとに別々に供給されるため、電源シーケンスもドメイン単位で実行します。番号は、そのドメインにおける電源投入シーケンスの順番を示しています。たとえば、ギガビット トランシーバーを使用しない場合はこのレール グループを使用して電源を切断し、消費電力を節約できます。また、省電力モードに移行する際も、このレール グループを使用してドメインへの電源を個別に切断できます。通常、ザイリンクス デバイスではプログラマブル ロジック (PL) の消費電力が最も大きいため、PL を使用しない場合は PL の電源を切断してスタティック電流を削減することを推奨します。

次の図に、電源投入シーケンスのタイミングを示します。立ち上がり時間とは、VRM が目標電圧の 95% まで立ち上がるのにかかる時間をいい、0.2ms ~ 40ms の範囲とする必要があります。レールとレールの立ち上がりの間には遅延時間の要件はなく、前のレールが目標電圧の 95% に達すると、次のレールの立ち上がりを開始できます。レールとレールの立ち上がりの間に長い遅延があると、ほかのレールでリークが発生することがあるため、推奨されません。いずれのザイリンクス デバイスも、すべてのレールの電圧が単調に増加すること、すなわち立ち上がりを開始後は電圧が降下しないようにする必要があります。

図 2. 電源投入シーケンスの例
注記: PMC には常に電源を供給する必要があります。PL とシステム ドメインのいずれかが動作している間は、両方に電源を供給する必要があります。

シーケンス制御では、次のレールを立ち上げる前に遅延時間を挿入できます。たとえば、レギュレータの立ち上がりに 10ms かかる場合、この値の遅延時間の経過後に次のレールの立ち上げを開始します。または、レールへの立ち上げが正しく完了したことを示す PG 信号を使用して、レギュレータからのフィードバックをコントローラー/シーケンサーに実装する方法もあります。この方法は、シーケンスの動作が正しいことを完全に可視化できるため、セーフティ アプリケーションで推奨されますが、複雑さは増します。

もう 1 つの一般的なレール統合は、最小レール グループと呼ばれます。これは、同じ電圧のレールを 1 つにまとめることにより、システムで必要なレギュレータの数を減らし、コストを削減するものです。ただしこの方法では、1 個のレギュレータがVersal デバイスの複数の内部ブロックに電源供給することがあるため、未使用ドメインの電源切断に制限が生じることがあります。つまりこのレール グループは、必要なレギュレータの数を減らすことと引き換えにパワー マネージメントの柔軟性を犠牲にしており、PL、フル電力ドメイン (FPD)、低電力ドメイン (LPD)、およびプラットフォーム管理コントローラー (PMC) ドメインのレールに一斉に電源が供給されます。

図 3. Versal AI コア/プライムの最小レール グループ

POR_B 入力は、電源投入シーケンスの間 Low にアサートし、アクティブなドメインに必要なすべての電源が目標電圧に達した後も TPOR_B (10µs) 以上の間、アサートしたままにする必要があります。最初に PMC のみに電源を供給した後、プロセッシング システム (PS)、システム、および PL ドメインへの電源供給をアクティブに管理するには、追加のパワー マネージメントが必要です。追加のパワー マネージメントを使用しない場合、POR_B のリリース時にすべてのドメインが目標電圧に達している必要があります。POR_B をディアサートする前に、REF_CLK が仕様の範囲内で動作している必要があります。

ザイリンクスがサポートするレール グループ (統合) に関して、ザイリンクスのパワー パートナー各社からはザイリンクスの仕様への適合が確認された電源供給リファレンス デザインが提供されています。電源供給リファレンス デザイン (ハードウェア検証済み、およびハードウェア以外で検証済み) の一覧は、電力効率 のウェブサイトを参照してください。