方法 1: イネーブル、パワー グッド、およびデイジー チェーン接続

電源シーケンス制御の実装方法 (XAPP1375)

Document ID
XAPP1375
Release Date
2022-05-06
Revision
1.0 日本語
電源シーケンスの種類として、このセクションではまずデイジー チェーン接続について説明します。これは電源シーケンスの方法としては最も基本的で低コストですが、最も原始的で、いくつかの短所もあります。また、この方法ではザイリンクス デバイスの要件である電源切断シーケンスをほとんどサポートできません。前述のとおり、正しいシーケンスに従って電源を切断しないと、予期しない動作を招くことがあります。ただし、メモリへの書き込みや I/O を介した通信を伴わないシステムでは、すべてのレールの電源を同時に切断してもかまいません。
注記: この方法を使用する場合は、電源切断がザイリンクスのガイドラインに違反しないように注意が必要です。詳細は、アンサー 76259 を参照してください。

デイジー チェーンを実装するには、VRM のイネーブル (EN) およびパワー グッド (PG) ピンを使用し、シーケンスの次の VRM に対して直接、またはデイジー チェーン パターンで電源投入を開始するように信号を送ります。EN ピンは VRM の回路を制御するための入力で、この信号をアクティブ (High または Low) に駆動すると VRM 出力が有効になります。PG ピンは VRM の制御回路からの出力信号で、レギュレータが正しい電圧範囲で正常にレギュレーション動作を実行していることを示します。PG ピンをシーケンスの次の VRM の EN ピンに接続することにより、前段のレールへの電源投入が完了するまで待つというシーケンスが可能になります。

このシーケンスをリードバックするには、Versal デバイス デザインに含まれる 2 つの GPIO を使用してシーケンスを開始し、シーケンスの最後のレギュレータが正しく立ち上がったことを読み出します。この方法の場合、すべてのレギュレータが正しく立ち上がったことはわかりますが、問題が発生した場合にどのレギュレータが正しく動作していないのかを特定できません。また、電源の完全なオン/オフの 2 つの状態しか存在しないため、パワー マネージメントをサポートできません。

次の図に、デイジー チェーンのトポロジを示します。

図 1. デイジー チェーンのトポロジ

デイジー チェーン シーケンスを開始するには、最初の VRM に GPIO または同様の方法を使用して電源投入の信号を送る必要があります。レギュレータのロジックしきい値とターンオン時間はレギュレータのデータシートに記載されています。レギュレータによっては互換性がないものや、ソフト スタート機能をサポートしたものがあるため、タイミングの問題を解決する際にはこれらを考慮に入れる必要があります。EN ピンを駆動する信号がピンしきい値の要件を満たしていない場合は、駆動側の信号と EN ピンの間にレベル シフターが必要になることがあります (次の図を参照)。PG および EN 信号は、VRM によってアクティブ High の場合とアクティブ Low の場合があります。この制御は、外部コントローラー、Versal デバイスの I/O、または電源投入によって実装できます。EN および PG 信号を使用したシーケンスには、多くのバリエーションがあります。この方法は、個々のアプリケーション要件に応じて適宜変更できます。

GPIO の電圧レベルが VRM のイネーブル ピンに適合しない場合、レベル シフターを使用して適切なレベルに昇圧または降圧できます。次の図に、例を示します。

図 2. レベル シフター

この方法でソフト スタート機能のない VRM を使用する場合は、RC 遅延素子を追加してレギュレータのイネーブルを遅らせることができます。VRM の立ち上がりを遅らせる RC 遅延回路の追加例は、図 1 を参照してください。遅延を計算する際は、VRM のターンオン時間を前段のレギュレータに実装した直前の遅延との相対値とする必要があります (td3 > td2 > td1)。

EN ピンの遅延は、次の式で求めます。



この式で、td は遅延時間 (ms)、R は抵抗値 (KΩ)、C はキャパシタ値 (µF)、VIN は EN 信号の電圧、VthEN は EN ピンのしきい値です。
注記: VRM のデータシートには、これとは異なる計算式が記載されていることがあります。この式が適用可能かどうかは、使用している VRM のベンダーに問い合わせてください。

EN および PG 信号を使用したシーケンスには、多くのバリエーションがあります。この方法は、個々のアプリケーション要件に応じて適宜変更できます。