ここまで説明した情報を使用して、このセクションではデバイス リソース、I/O、GT、およびパッケージ サイズに関するアプリケーション要件を満たした VC1902-VSVA2197 デバイス用のヒートシンクのサンプル デザインについて簡単に説明します。
- パッケージに対して最初の熱評価を実行する。
XPE を使用して、目的のアプリケーションに対して最初の消費電力見積もりを実行します。熱シミュレーション モデルは、ザイリンクス ウェブサイトの 電力効率 のページから入手します。簡単な代表的境界条件を使用して簡単なシミュレーションを実行し、動作ジャンクション温度にいくらかのマージンがあることを確認します。適切なマージンが見られない場合は、妥当なソリューションを得ることができるまで許容可能な範囲でデバイス、パッケージ、消費電力、環境条件を変えて反復を繰り返します。この例では、十分な熱マージンがあることがわかっています。
- 関連資料とパッケージ リッド タイプ、接触面積、高さの要件を特定する。
この例では Versal デバイスを使用しているため、 『Versal ACAP パッケージおよびピン配置アーキテクチャ マニュアル』 (AM013) を参照してターゲット パッケージが 45 x 45mm リッドレス パッケージであることを確認します。
パッケージの物理寸法は、この資料の「機械的図面」のセクションにあります。表 1. ターゲット パッケージの概要情報を示した表の例 (「パッケージおよびピン配置」ガイドより) パッケージ 説明 パッケージの仕様 パッケージ タイプ ピッチ (mm) サイズ (mm) LSC ボール グリッド サイズ (ボール数) SFVB625 Forged リッド付きスーパーファインピッチ BGA 0.8 21 x 21 – VBVA1024 ファインピッチ ベアダイ 0.92 31 x 31 4 x 4 VFVB1024 Forged リッド付きファインピッチ 31 x 31 4 x 4 VFVB1369 Forged リッド付きファインピッチ 35 x 35 5 x 5 VSVE1369 スティフナー リング付きリッドレス ファインピッチ 35 x 35 5 x 5 VSVA1596 スティフナー リング付きリッドレス ファインピッチ 37.5 x 37.5 5 x 5 VIVA1596 スティフナー リング付きリッドレス オーバーハング ファインピッチ 40 x 40 6 x 6 VFVA1760 Forged リッド付きファインピッチ 40 x 40 6 x 6 VFVC1760 Forged リッド付きファインピッチ 40 x 40 6 x 6 VSVD1760 スティフナー リング付きリッドレス ファインピッチ 40 x 40 6 x 6 VSVA2197 スティフナー リング付きリッドレス ファインピッチ 45 x 45 7 x 7 VSVA2785 スティフナー リング付きリッドレス ファインピッチ 50 x 50 9 x 9 図 1. この例のターゲット パッケージの物理寸法 (「パッケージおよびピン配置」ガイドより)VC1902-VSVA2197 はリッドレス デザインです。先に定義したように、接触面積はダイの表面積によって定義されます。これは、上の図では 25.75 × 17.78mm と記載されており、ヒートシンク ベースのアイランドの最小寸法もこの面積となります。最大寸法は、X 方向が 45 – (2 × 4.00) - 0.20 = 36.8mm で、 Y 方向が 45 – (2 × 6) - 0.20 = 32.8mm です。ただし、スティフナー リング内側の四隅に突起があるため、XY 方向ともここまで大きくはできません。したがって、スティフナー リングの四隅に接しない範囲で大きくすることを推奨します。アイランドの製造およびヒートシンクの配置にばらつきが生じることを見込み、各方向とも 2mm 強を足し、アイランドの接触表面を 30 × 22mm とします。これにより、どのような状況においてもスティフナー リングへの干渉なしにダイ表面全体をカバーできるようになります。
次に、アイランドの高さをダイ平面からスティフナー リング平面までのオフセットとして求めます。これは、A3 パラメーターの「MAX」に記載されている 1.15mm です。アセンブリ時にヒートシンク ベースがスティフナー リングに接しないようにする必要があるため、この値にいくらかのマージンを追加してアイランドの高さとします。最後に、A パラメーターの値を使用して PCB からヒートシンク ベースまでの最小高さを決定します。
次に、3D STP ファイルをザイリンクスから取り寄せ、サイズに関する前提条件をモデルを使用してテストし、干渉なしに正しく適合することを CAD プログラムで確認します。何度も微調整が必要になることもあります。この時点でパッケージの機械サンプルを注文しておくと、ヒートシンクの最初のプロトタイプが完成するころにはこの機械サンプルを使用した適合性解析が可能になります。
- ヒートシンク ベース、フィン、エアフロー、およびアタッチメントを設計する。
このサンプル デザインでは、適度なエアフローがあり、過度に高い周囲温度は想定されないため、ヒートシンク ベースはシンプルなアルミニウム製としています。より条件の厳しい環境での動作が想定される場合は、その他の材料または二相冷却を検討する必要があります。ここでは、ヒートシンク ベースの面積を 100 × 70mm とします。これだけの面積があれば、ファンシンクとフィンで十分に冷却できると考えられます。これらのパラメーターは、熱シミュレーション後に調整できます。先に収集したアイランドのパラメーターを使用して、ヒートシンク ベースの底部中央を設計します。さらに効果を高めるため、ダイに接触するアイランド表面にはエッチングを施します。
フィンはいくつかの設計を検討および評価し、最適な配置となるようにモデル化しました。全体的なデザインの高さ要件内に収めるため、2 1/5 インチ径ファンをフィンに埋め込んでいます。
製品寿命全体にわたって均一で適切な圧力補償が得ることができるように、ヒートシンクの四隅に 4 本のバネ付きネジを等間隔で配置し、PCB には適切なキープアウト エリアを確保しています。
次に、バネのバネ定数を計算します。最初の前提条件では、このデバイス/パッケージに対する目標圧力が 30PSI、面積はダイ面積と同じ 25.75 × 17.78mm = 457.835 mm2、 そしてバネ圧縮の量が 0.5 インチです。まず、ダイ面積をインチに変換します。 457.835 / 645.16 = 0.7096in2 。
- TIM を選択し、塗布量を決定する。
VC1902-VSVA2197 はリッドレス デザインです。このアプリケーションで使用しているのは TIM1.5 です。最適な接触抵抗を得るために、相変化材料 (PCM) コンポジットを選択します。入手性、委託製造業者の能力、過去の経験を考慮し、Laird 780SP を材料に選択しました。ダイの共平面性の最大偏差は 0.1mm です。このため、接触面積全体に対して最大偏差の体積をカバーできるように材料を定量塗布する必要があります (25.75 × 17.78 × 0.1mm = 45.8mm3)。適切なカバレッジとマージンを得るために、追加の材料を指定します。材料の定量塗布についての詳細は、委託製造業者と協議して決定します。
- シミュレーション用の熱パラメーターを決定し、熱ソリューションの妥当性を確認する。
最初の評価時に入手した熱モデルをエラボレートして、熱システムをより正確に表現するようにします。実行と評価を必要に応じて反復し、なるべく多くの熱マージンを得るようにします。十分な熱マージンを得ることができない場合は、事前の決定を評価し直し、適切な熱マージンを得てから次の手順に進みます。
- デザインを最終決定する。
最終的なデザインが決定したら、ヒートシンク デザインを製造へ送ります。アセンブリおよびテストの詳細は、委託製造業者と決定する必要があります。詳細は、製造業者ごとに異なります。ヒートシンクを受け取ったら、機械的適合性をテストすると共に、圧力とボード歪みがデザインの目標を達成していることも確認する必要があります。次に熱特性評価を実行し、熱シミュレーションとデザインが設計マージン内に収まっていることを確認します。