前述のように、デバイスの消費電力は可変で、消費電力の見積もりは実際の動作を反映した正確なものになるとは限りません。このため、インシステム熱解析では、テスト時および動作時にデバイスで消費される電力を正確に測定することが非常に重要です。デバイスは、SYSMON 回路を使用して電圧を正確に測定できます。ただし、電流はデバイスから直接は測定できません。このためボード設計時には、実際の消費電力を計算できるように、デバイスの電源レールに供給される電流を測定する手段を組む込むことを前もって検討することが必要です。多くの電圧レギュレータには、何らかのテレメトリ回路が内蔵されています。ただし、内蔵していないものや、精度が低いものもあります。レギュレータで電流を測定できない場合や、測定精度が低い場合は、デバイスの消費電力を適切に特性評価する手段として、そのようなテレメトリをボードに追加することを推奨します。この重要な情報がなければ、熱管理が不十分なのか、システムの消費電力が想定を上回っているのかを理解するのが難しくなります。一般に、デバイスの電流測定は製品ライフサイクルのあらゆる時点で役立ちますが、特にプロトタイピング、特性評価、および立ち上げの段階では特に重要です。システム コストとデバッグ可視性のバランスをとるため、電流測定回路をボードに組み込んでおき、量産後にコスト削減を目的にこの回路を取り除いている事例もあります。消費電力を正確に測定できる手段を用意しておかなければ、熱問題の特性評価とデバッグに大きな支障をきたします。